松本猛(たけし) 公式サイト / 熊と里山

つれづれ日記/安曇野ちひろ美術館前館長、長野県信濃美術館・東山魁夷館前館長松本猛(たけし)のBlog

カテゴリ: つれづれ日記

熊と里山

更新日:2010.08.26

 最近に松本市や安曇野市で熊の被害が出ている。昨日、会った方からも熊を見かけたという話を聞いた。安曇野の私のうちのあたりでも熊出没注意のアナウンスが流れている。とはいえ、森の中を散策したくなることもある。妻に必ず持って行けと言われたカウベルを鳴らしながら、森の中を歩いた。足裏の面積が一番大きいのは実は熊ではなく人間なのだという話を思い出した。だから動物たちは、人の歩いた後を通る。登山道も夜は動物たちの道になるのだ。

 足を止めると風が渡っていく音が聞こえる。自然の中にいると心が休まる。見通しのいい森ならば、熊も寄っては来ないだろう。

 去年の秋に私自身、安曇野で子熊を見かけた。以前、北アルプスに登って、熊に遭ったことはあるが人里近くで、これだけ熊が出没するようになったのはどうしてだろう。今回の出没はどんぐりが山になる前に、畑の作物をあさりに来たらしい。確かにそういうこともあるのだろうが、根本的には山と人里の中間地帯がなくなったことが理由なのではないか。

 かつては、人が山に入って間伐を行い、里山の手入れをしていた。山菜やキノコをとる人々も多かった。間伐をすることによって植物の植生が多様になり、生物の種類も増える。このことは、CWニコルさんがつくった実際の里山で、彼から直接うかがった。人が入る里山は自然界との動物たちとの緩衝地帯だった。実際、間伐を進めることによって、イノシシによる農作物の被害は激減するという。

 文明化という人間が求めてきた生活スタイルは、一方で自然と上手に付き合うという生活習慣を失なわせることになった。自然と付き合いながら生きるというライフスタイルはどうやったら復活させることができるのだろう。小さいときから、自然に親しみ、その喜びを知る以外に方法は思いつかない。やはり、里山が人間にとってどれだけ大切かを体験できる教育を、地域と親と保育園、幼稚園、学校が一緒になってが考えていかなければならないのだろう。

 

松本猛

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