松本猛(たけし) 公式サイト / 「ポップアート」 2009.12.9朝日新聞〈長野版〉「時計をはずして」(エッセイコラム)に掲載

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「ポップアート」 2009.12.9朝日新聞〈長野版〉「時計をはずして」(エッセイコラム)に掲載

更新日:2010.01.17

長野県信濃美術館は20日まで「ポップアート1960’s→2000’s」という展覧会を開催しています。とご案内をしつつも、東山魁夷の絵のように、心にしみる美しい作品を期待して訪れる人は間違いなく失望する。 
壁に展示されているのは、子どもが描いた巨大な落書きのような絵(実際に子どもの落書きを拡大したもの!)や、昔のモノクロ西部劇映画の雨が降っているような一場面の写真としか見えない絵 (これが1億円!) や、拡大したコミックの一場面や、スープの缶詰をそのまま描いただけの絵や、印刷の色見本を並べただけのような作品群である。
ポップアートの象徴のように言われるアンディー・ウォーホルよるマリリン・モンローの写真を使った版画が作られたのは、彼女の謎の死の直後だった。世の中の話題に便乗したあざとい仕事のようにも見えるが、実はこの感覚こそポップアートの本質につながる。
ダ・ヴィンチやレンブラントやゴッホや北斎が逆立ちをしてもこうした作品は描けなかった。何故か?彼らの時代には映画はなく、モンローもいなかったし、コミックもなかったからだ。「当たり前だ!」とおっしゃいますな。絵には日付のある絵と、時代を超える絵があるのです。
日本のポップアーティストとも言える池田満寿夫(展示中)はこういう。「コラージュには技術は不要です。これがぼくの気に入っている点ですがネ。そのかわり機知と諧謔と批評精神とポエジーが必要です」と。ポップアーティストとは視覚を通して時代を切り取る人たちだ。
もっとも、ポップアーティストを作り上げるのは画商たちだ。ニューヨークの地下鉄の落書き小僧キース・へリングを一躍時代の寵児に仕上げたのも画商だった。今回の展示はしたたかな画商と時代に超敏感なアーティストたちによる現代史といえるかもしれない。

(安曇野ちひろ美術館/長野県信濃美術館館長 松本 猛)

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