松本猛(たけし) 公式サイト / 「善光寺御開帳の不思議」 2009.4.22朝日新聞〈長野版〉「時計をはずして」(エッセイコラム)に掲載

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「善光寺御開帳の不思議」 2009.4.22朝日新聞〈長野版〉「時計をはずして」(エッセイコラム)に掲載

更新日:2010.01.16

信濃美術館へ出勤するときは長野駅からバスに乗って、善光寺大門で降りる。本堂を東へ曲がり美術館に向かうのだが、御開帳以来、この日常に異変が起きている。バスは増便され次々と来るのに、大概一台目は満員で乗れない。大門で降りて参道を通ろうものなら10分のところが1時間あってもたどり着けないだろう。
前回の御開帳では2ヶ月間に6百万人が訪れた。諏訪の御柱や京都の祇園祭や青森のねぶたのように華やかな出し物があれば人が集まるのもわかる。しかし御開帳は前立ち本尊に結ばれた回向柱に触れ、御印文を頂戴するだけだ。7年ごとにしか姿を現さないといっても、間近に見られるわけでもなく、仏像彫刻としても特別注目されるものではない。ということは、人々はやはり、ご利益と極楽往生を求めて訪れるのだろうか。
善光寺信仰は鎌倉時代に爆発的に広まる。善光寺聖と呼ばれる僧尼たちが「日本最古の仏」「生身の阿弥陀如来」「女人救済の仏」という3要素を掲げて布教につとめたからだ。
注目すべきは三番目の女人救済にあると思う。古くから有力寺院は女性を排除する傾向にあった。現世の生活が厳しい人ほど来世の安寧を願うはずだ。女人救済のいくつもの伝説を携え、尼たちは全国を行脚したのだろう。その活動は文献にもたくさん残されている。
善光寺大本願の上人は代々女性である。人口の半数を占める女性の支持を得たことが現在の繁栄の基礎を作ったのだろう。
参詣する人々を見ていると、七割がたは60代以上の人々だ。女性の比率は高い。晩年になり、一生に一度は善光寺参りをして、極楽往生を遂げたいという願いもわかる。しかし、顔を見ていると必ずしも信心深い人ばかりでもないように思う。
御開帳の魅力はどうも理屈だけでは説明できないようだ。

(安曇野ちひろ美術館/長野県信濃美術館館長 松本 猛)

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