松本猛(たけし) 公式サイト / 2010.2.10朝日新聞〈長野版〉「時計をはずして」(エッセイコラム)に掲載

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2010.2.10朝日新聞〈長野版〉「時計をはずして」(エッセイコラム)に掲載

更新日:2010.02.12

「星を、天の川を、見られる幸せ」

ガリレオが初めて望遠鏡で天体観測を行ってから400年が過ぎた。それを記念して昨年、国際天文学連合の総会がブラジルで開催された。決議案は「夜空の星を見ることは社会文化的、そして環境的な意味での基本的権利だ」と訴えた。
現在、世界では20億人以上が天の川を見ることができないそうだ。都市部の照明の三分の一近くは上方に向かい、光は無駄に空を照らしているという。環境への関心は高まっているが、闇の減少については無関心な人が多い。それどころか、豊かさの象徴として光を求める人の方が多いかもしれない。大都会では街路樹をイルミネーションで飾ることは当たり前になった。あの光の強さに慣れると、夜空を見上げても星の存在にすら気づかないかもしれない。
四方を山に囲まれた静かな町、福井県大野市は「感性はがき展」を主催している。毎回自然をテーマに葉書での絵や言葉のメッセージを募集しているが、今回のテーマは「星」だった。私は審査員を務めているので、全国から寄せられた「星」への思いをたくさん目にした。子どもや若い世代の作品で印象深かったのは、星として地球を認識している人が多いことだった。宇宙空間から見た地球の画像が身近になった世代なのだ。一方、年配の世代は星空の記憶を語る人が多かった。たとえば風呂屋の帰り道で見上げた夜空や、終戦後捕虜になった外地で故郷を思いながら眺める星の話だ。
都市部に生活する人が多い日本では、今やかなりの人が天の川を見ずに一生を終えるのかもしれない。たとえ田舎に住んでいようと、夜空を見上げる機会は確実に少なくなっている。牽牛と織姫の七夕伝説はいつまで語り伝えられるのだろう。
安曇野に住む私は幸いなことに天の川を見ることができる。今夜は久しぶりに星座早見表を手に夜空を眺めてみよう。

(安曇野ちひろ美術館/長野県信濃美術館館長 松本 猛)

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