松本猛(たけし) 公式サイト / 2010.2.23信濃毎日新聞【文化面】東山魁夷が選んだ風景・ドイツ・オーストリア編⑥

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2010.2.23信濃毎日新聞【文化面】東山魁夷が選んだ風景・ドイツ・オーストリア編⑥

更新日:2010.02.25

「デューラーの家より ニュルンベルク」画業を見つめた旅

6 デューラーの家より(ニュルンベルク)

県信濃美術館の「Cafe Kaii」のロゴマークは東山魁夷のHとKを組み合わせた落款(図)から取った。頭文字のHを犬にKを人に見立てたデザインが面白かったからだ。氏名の頭文字など二つ以上の文字を組み合わせて図案化したものをモノグラムという。ルイ・ヴィトンのLとVを組み合わせたものが有名だが、最初にモノグラムを作ったのはデューラー(1471~1528)だといわれている。アルブレヒト・デューラーはAの中にDを入れたモノグラムをサインとして絵の中に描き込んでいる。(図・上の数字は描いた年)
魁夷はデューラーについてこう述べる。「あの追求のすさまじさは、卓越した技術の持ち主とか、巨匠という栄光の座に在った、いわゆる恵まれた画家の域をはるかに超えている。(中略)一人の人間の可能を超えた仕事を、彼はこの世に残した」(馬車よゆっくり走れ)。魁夷はこのニュルンベルクに生まれた北方ルネサンスの巨匠を尊敬していた。魁夷の落款はデューラーへのオマージュ(讃辞・敬意)として作られたのだろう。
デューラーの生きた時代、ニュルンベルクは神聖ローマ皇帝の城、カイザーブルクがあるドイツ最大の町だった。町並みを見下ろす高台に建つ城のすぐ足元にデューラーの家はあった。「デューラーの家より」はこの家の3階の窓から城を見た景色だ。(写真は3階の窓が開かなかったため2階から撮影した)
魁夷は、ドイツの旅の中で、20代だった留学生時代と巨匠と呼ばれるようになった現在の自分を見つめながら各地を巡っていた。現在の自分の方が絵に対しては、はるかに厳しくなったと自負しながら、一方で師匠(マイスター)になることを戒め、常に遍歴(ヴァンダー)徒弟(・ブルシュ)の心を持ち続けたいと旅行記に記している。
魁夷は、デューラーも眺めたはずの窓からカイザーブルクの建物を見つめ、何を思ったのだろう。デューラーの画家としての厳しさに思いを馳せながら、画家とは何かを自らに問うていたように思われてならない。

松本猛

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